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「わ、かった、すぐに行く……!」
かろうじてそれだけ答え、すぐに電話は切られた。そう答えたのに、私はぐらりと体をよろめかせて壁に手をついてそれを支える。
行かなきゃ。ばあちゃんの最期。
ああでも、ここから電車を乗り継いで結構時間がかかってしまう。間に合えばいいけど、いやだからそんなこと考えるより早く動かないと……!
完全にパニックに陥っている私の背後から、河野さんの声が聞こえた。
「高杉さん? どうしました、大丈夫ですか?」
振り返ると、心配そうにこちらを見ている河野さんの顔が見える。私は唖然としたまま言葉を漏らす。
「祖母、が、危篤みたいで……」
「え! す、すぐ行かなきゃ!」
私の肩を支えながら河野さんが慌てたように言った。
「病院どこですか?」
「ちょっと離れてて……隣の市で……」
「すぐ行かないと! 荷物取りに行きましょ!」
あわあわと河野さんが言う。私も頷いてようやく足を踏み出した時、握っている携帯が再び鳴ったのに気がついた。どきり、と心臓が鳴る。
ばっと画面をみると、そこには巧の名前があった。
「? 巧?」
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