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自分の涙が溢れてベッドのシーツにシミを作った。母の鼻を啜る音が響いている。
祖母は返事を返さなかった。ドラマみたいに、最期だけ意識を取り戻して、なんてことはなかった。
それでも、私の言葉が聞こえていたように、彼女の力は尽きられた。規則的に聞こえていた心電図の音が、高く長い継続音と変わる。
ほぼ同時に病室に医師と見られる人がはいってきた。ベテランであろう男性医師は、私が手を握っているのを見て、ああ、と小さく呟く。
「待ってらしたんですね。お孫さんを」
「え……」
彼はそれだけ言うと、ペンライトを取り出して死亡確認を行なった。
ばあちゃんは、とても穏やかな顔だった。
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