何かが変わる

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   忙しかった葬儀も全て終わり、私たちはようやく自分たちの家に帰ってきた。  家族で見送るお葬式は大変穏やかなものだった。ばあちゃんも年齢を考えればそこそこ長生きしたし、泣きながら見送ると言うより微笑んでみんなおばあちゃんを送った。  何より、最期に間に合って、よかった。 「杏奈、Tシャツ前後ろ逆」  喪服から着替えてリビングにいくと、巧も黒いスウェットに変わっていた。私をみるなり呆れたように言う。見下げてみれば、確かに胸にあるはずのおにぎりが見当たらなかった。 「あ、しまった」 「ま、いいけど」  私がまだ少しぼうっとしていることを、彼は強く咎めなかった。ソファの前には、お茶の入った冷えたグラスがふたつ置いてある。彼が私の分も入れてくれたらしい。そんな小さな親切心に微笑んだ。  私はそのまま服を変えることもせず、巧の隣に座った。 「おい、首苦しそうだからちゃんと変え」 「巧、ほんっとーにありがとう」  私は深く頭を下げた。  帰ってきたら一番に言おうと思っていた。なかなか葬儀の間は話す機会もなかったし。  巧は面食らったように私をみる。
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