何かが変わる

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「いや、別に礼を言われることは何も」 「仕事休んで葬儀も出てくれて。おばあちゃん絶対喜んでたよ」 「それは当然だろ、戸籍上俺も家族だぞ」 「そりゃそうだけど。それに巧が送ってくれなかったら絶対私おばあちゃんの最期に間に合わなかったよ。もう、本当に感謝してる。本当に本当にありがとう!」  言い切って顔を上げると、真っ直ぐにお礼を言われたことに戸惑っている巧がいた。この人って、お礼言われるの苦手だよね。変な人。  私はニコリと笑う。 「それに……今更だけど、結婚してよかったって。ばあちゃんを最後喜ばせれたのやっぱりよかったって思ったの。私に結婚提案してくれてありがとう」 「……別に、いいけど」   「この前巧と会った時、本当に嬉しそうだったじゃん。結婚式とか巧が気遣ってくれたのに見せれなかったのは残念だけど、それでも……」  話しながら、目の前に祖母の顔が浮かんだ。三人で笑いながら話している場面だった。  『よかったねえ、杏奈ちゃんよかったねえ』って何度も繰り返していた。私よりも私の幸せを喜んでくれる人。
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