何かが変わる

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   もう泣き終えたと思っていた涙が再びぐっと湧き上がってくる。十分泣き尽くしたはずなのに。涙腺が壊れてしまっているようだ。  慌ててその涙を誤魔化そうとしたとき、目の前の巧がそれを止めた。 「いやなんでそんな隠そうとしてんの」 「い、いやあ、目の前でメソメソ泣かれたらうざくない?」 「俺は鬼かよ」  突然、目元に黒いスウェットの生地が見えた。巧が着ている服の袖で、私の涙を拭き取ったのだと理解する。ぎゅっと抑えられ、反射的に目を閉じた。 「杏奈がおばあちゃんっこだったって知ってるし、流石にここで泣くのをうざがるわけないだろ」  やや乱暴に涙を拭き取られ腕が離れる。目を開けると、やはり彼の着ている服の袖が僅かに濡れていた。  いや、泣いてる女の涙を普通スウェットの袖で拭き取るかな。オーウェンなら絶対そんなことしないよ。  そう思いながらも、なぜか私は笑った。泣きながら笑った。スーパーな藤ヶ谷副社長が、こんな女の慰め方をするなんて。 「……何」  巧が不機嫌そうに聞いてくる。 「いや、女の慰め方雑じゃない? 私相手とはいえ、性格出てるよね」
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