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翌日は、幸運にも土曜日で仕事は休みだった。
巧が言ったように泣き続けて目が腫れ気味だった私としてはありがたかった。すぐに仕事に行く気力もあまりないし。
朝ゆっくりと起床し、何か朝食でもとリビングに入った途端、スーツを着ている巧と出くわす。なぜか一瞬のけぞり、私は聞いた。
「あ、おはよ、仕事?」
「はよ。ちょっと出てくる」
普段通りの巧は腕時計を眺めながら答えた。祖母のことで突然仕事を休ませてしまったので、休日出勤せざるを得なくなったんだろう。
私は軽く頭を下げた。
「そっか、仕事休んでたから……ほんとごめんね」
「だから謝ることじゃないだろって。いつのまに謝るの趣味になったんだよ」
「趣味て」
「行ってくる」
ぶっきらぼうにそう言い残した巧は、すっと私の隣を通って廊下へと向かっていった。なんとなく振り返ってその背中を見つめる。
……なんだろう。なんか、ちょっと気まずく感じちゃった。
昨日巧の胸を借りて泣いたのは流石に今思うと小っ恥ずかしいし、なんであんなことをしてしまったんだろう。
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