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玄関で靴を履き、そのまま外へ出ていった巧の背中を見送りながらぼうっと考える。
それに、今まで二次元の男しか興味なかった自分が三次元の男の胸に顔を埋めるなんて、想像もつかなかった。まるで自分とは違うその広さと筋肉質な感触は思い出すとどうもむず痒くなる。私お父さんに抱っこされたくらいしか記憶ないもんな。
「て、ゆうかさ。いいのかあれは」
誰もいない部屋に自分の声が響いた。だって昨日はばあちゃんのことで頭がいっぱいだったから忘れてたけど、あの男本命の彼女がいるんじゃないか。なのに、他の女に胸を貸していいのか?
もやもやと複雑な思いを抱きながら、私はとりあえずキッチンに入る。冷蔵庫を開けて中を覗きながら頭の中は知らぬ間にどんどん考えが繰り広げられていた。
よくないよね、うんよくない。相手のシングルマザーが知ったら絶対嫌な気持ちになるよ。でもあれかな、巧の態度を見るに試合に負けた同性を励ますみたいな感覚でやったのかな。十分ある、ありえすぎる。
むしろなぜ私が一人こんなに悶々と考えなくてはいけないんだ。もうやめた、忘れよう。
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