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首を傾げながら立ち上がり、インターホンの画面を覗き込む。てっきり宅配便を届けてくれるおじさんを想像していた私は、そこに映っている人を目にした途端ぽかんと口を開けた。
色白な肌に栗毛色、耳にはピアス。どこか中性的に見える整った顔立ちの人が、あちらから微笑んで見ている。
「樹くん……?」
巧の弟の樹くんだった。結婚の挨拶のためにみんなで食事をしたのが最後で、それ以降彼と会うことはなかった。会う理由もないのだから当然だ。
そんな彼がなぜ突然うちに? 巧に用があるのなら電話でもすればいいのに。そう考えて思い出す。そういえば、彼らはあまり仲のいい兄弟ではなさそうだったな……もしかして、巧の電話番号すら知らないのだろうか。
居留守をしようと思っていたが、何か急用でもあれば困る。そう考えた私は、恐る恐るそのインターホンに出た。
「は、はい」
私の声を聞くなり、樹くんはぱあっと笑顔になる。どこかのアイドルグループにいてもおかしくないその可愛らしい笑顔は破壊力が凄まじいと私ですら思った。
『杏奈ちゃん! 久しぶり!』
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