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ポケットに入れておいた携帯を取り出し、こっそりメッセージを入れておく。私たちの関係バレないようにがんばるからね、と……。
「うっわ、リビングひっろー」
遠くから聞こえる声に慌てて足を進めた。リビングへ入ると、もう彼はソファに座って腰掛けていた。その自由ぶりについ面食らう。
以前会った時も思ったけど、この子すごく奔放で自由だよなあ。人懐こいし、天然で人を振り回すタイプに見える。
キッチンに入りコーヒーを淹れる。あまり長居は望ましくない、私たちが形だけの夫婦だとバレては困る。
樹くんは楽しそうに座っている。そんな彼の目の前に、淹れたてのコーヒーをおいた。
「どうぞ」
「あ、ごめんねありがとう!」
子犬みたいな顔で見られれば、悪い気はしない。とんでもない力を持っているもんだ。
なんとなく隣に座るのも気が引けるので、私はそのままローテーブルの前にしゃがみ込んだ。
「突然どうしたの? 驚いた」
「んーごめんね。父さんから今日巧が休日出勤するだろうって小耳に挟んでさ。一度、杏奈ちゃんとゆっくり話してみたなったんだよね」
目の前のコーヒーを啜りながら言った。
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