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「巧と、あんまり仲良くないんだっけ」
「はは、そうなんだよね。兄の巧はさ、頭良くて会社の跡取りで、こっちはコンプレックス持ってるわけ。んであの性格だし反発するよね」
「そうなの? 樹くんだって、こうやって人とすぐ馴染める特技持ってるのに。巧とは全然違うよ、彼は最初どこか近寄り難い感じがあるもの。全然似てないんだね」
樹くんに沢山話して欲しいと思っていた。下手に結婚生活話や付き合っていた頃の話を聞かれると、ボロが出そうだと思ったからだ。
彼は小さく笑う。
「まあ、似てないかな」
「無理に仲良くする必要ないけど、たまには会うくらい——」
「ねえ、二人って本当に結婚してる?」
完璧なるいい妻を演じている最中、彼はそうぶっ込んできた。つい一時停止する。
まさかそんな真意を突いた質問をこんな序盤でされるとは思っていなかった。私は笑って樹くんを見る。
「あはは、婚姻届も出してるよ。ちゃんとしてます」
「そう言う意味じゃなくてさー……。前食事を取った時、何か違和感感じてたんだよね。二人が一年近くも付き合ってきたとは思えないよそよそしさ」
「あの日は緊張してたの」
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