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ニコリと余裕のある笑みを浮かべた。樹くんはそれを聞いて、感心するようにこちらを見る。うまいこと答えたな、という反応か。
「はあーなるほどね。いい返事だね」
「あは、どう言う意味」
「巧は今までもそれなりに女の人と付き合ってきたけど、心のどこかで例の人が気になって入れ込めないみたいだったから。俺からしたら巧がそんな昔の話を引きずるのが意外すぎるんだけど、もっと意外なのはそれほど拘ってたのにあっさり杏奈ちゃんと結婚したことだよね」
樹くんは笑いながら言う。そっと置いたコーヒーカップの音がやけに大きく響いた気がした。耳に光るピアスを意味もなく見つめ、私は何も答えずにいた。
彼はさらに続ける。
「んー例えばー。結婚しろしろうるさいうちの親に疲れた巧が、なんらかの理由で杏奈ちゃんに目をつけて形だけ結婚しませんかーって提案したとか」
(当たってるよバーロー)
「だから二人は戸籍上は夫婦でも、実際はただのルームシェアしてる男女であって付き合ってもないのかなって!」
(今までの流れ全部見てたんか?)
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