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「一目惚れしちゃったから」
「…………」
ただ無言で樹くんの顔を見上げながら、私の心は全く別のことを考えていた。
なんて言うんだっけ、これ。壁ドン、いや違う、壁じゃないからー……床ドン。少女漫画でよく見るやつ。3次元お断りな私は無論こんな体験初めてなんだけど、へえ下から見るとこういう感じなんだ。
オーウェンは確か壁ドンはあったんだよなあ。壁ドンの方がよかったなあ。そしたら脳内で樹くんをオーウェンの顔に差し替えて楽しめるのに。
「…………」
「…………」
「…………」
「あの、杏奈ちゃん? 無視?」
少し困ったように樹くんが言った。それを聞いてようやく私の精神が3次元に帰ってくる。しまった、完全に別世界に行ってた。
体制はそのままに、私は全く色気のない声で言う。
「ごめん、床ドンってこんな感じなんだーって感心してた」
「…………」
「えーとなんだっけ、私に一目惚れ? そんなわかりやすい嘘通用しないよ。巧に当てつけたいのかな?」
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