3090人が本棚に入れています
本棚に追加
彼が本気で私に告白してきたなんて思うはずがない。そんな態度は微塵も感じたことはないし、恐らく仲のよくない巧にちょっとした嫌がらせという感じだろう。
樹くんは面食らったように目を見開き、ため息をついた。少し沈黙が流れてから声を漏らす。
「待って、女の子押し倒してそんな反応されたの初めてでちょっと落ち込んでる」
「あ、やっぱりよく使う手法なのね? 手慣れてるもん。残念だけど私、男に興味ないから」
「え? だって巧」
「あーーーー『巧以外の』男に興味ないからってこと!!」
慌ててそう言葉を付け足すと、その途端樹くんが勢いよく吹き出して笑い始めた。大声で目を線にしてゲラゲラ笑う。どうでもいいけど、どいてくれないかな、それとも私がすり抜ければいいのこれ?
ひとしきり笑った後、樹くんは目尻に涙を浮かべながら私に言った。
「おっもしろいね杏奈ちゃん」
「あの、そろそろどい」
「なるほどね、巧がルームシェアを持ちかける理由がわかった気がした」
「だからルームシェアじゃなくてちゃんと結」
「一目惚れは確かにちょっとからかうつもりだったんだけど。
今ほんとに、杏奈ちゃんに興味シンシンになった」
最初のコメントを投稿しよう!