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彼はどこか目を輝かせてそう言った。それはまるで、子供が素敵なおもちゃを手に入れた時のような表情。
私はそんな樹くんをただ何とも思わず見上げていたけれど、次の瞬間彼の顔が落ちてきたのに気がつく。さすがにこの心臓がドキリと飛び跳ねた。
慌てて腕を動かそうとするも、両腕はしっかり樹くんに掴まれていることに今更ながら気づく。あれ、ちょっと待ってこれどういう状況!?
「え、ちょ、ま、た、オ」
さすがの私も今どういう状況になっているのか理解して慌てる。ぱくぱくと金魚のように口を開けている私にお構いなしに、毛穴ひとつない白い肌が降りてくる。頭の中でこれまでの人生が蘇った。普通走馬灯って死ぬ瞬間見るはずなのに、なぜキスされそうな今見てるんだ私は。
一瞬覚悟して体を強張らせた瞬間、今にも触れそうだった樹くんの顔が突然持ち上がる。広がった視界に、見慣れたもう一つの顔があった。
「あっれ、いいとこなのになあ。帰宅早いねえ」
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