3088人が本棚に入れています
本棚に追加
「えーほんとに? なんっか怪しいんだよなあ。普通このシーンで旦那様が助けに来てくれたら抱きついて喜ぶところじゃない?」
言われて確かに、と納得する自分がいた。しまったここは泣きながら巧に縋りつくべきだった。今更遅すぎる。巧は凄い目で樹くんを睨みつけていた。樹くんは怯むことなく、むしろ余裕のある顔で巧を見上げている。
果たしてどうやってこのシーンを終わらせようか。無理矢理追い返しても樹くん絶対疑念を持ったままだし。私たちが夫婦だと思わせるそれっぽいこと……
「あ」
私が声を上げると、二人が注目した。そんな四つの目に見られややたじろぎながら、私は無言で自分の部屋に走り込んだ。
しっかり鍵はかけながら自室で箪笥を漁る。目的のものをすぐに見つけ出し、再び殺伐としたリビングへ走り出した。気まずそうな二人の前に立ち、両手に持っていた布を広げた。
「これ!」
「……へ?」
樹くんが目を丸くしてそれを見た。私のおにぎりのTシャツだった。巧ですら、何を持ち出してるんだこいつって目で私を見ている。
「奇抜なTシャツだね」
「可愛いでしょ。これ、ペア」
最初のコメントを投稿しよう!