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もう一枚をかざした。そこには、私のよりサイズの大きいおにぎりTシャツがあった。樹くんどころか、巧ですら目を丸くする。
この前、おばあちゃんのお見舞いに付き合ってくれた巧にお礼としてこのTシャツを手に入れたのをすっかり忘れていた。何も考えずに私と同じデザインのものを買ったのだが、これは一般的に言えばペアルックだ。
「ねえ、巧がこんなおにぎりのTシャツ着るの見たことある?」
「まじでない」
「あの藤ヶ谷巧が。おにぎりのTシャツ着て寝てるの。私が欲しいって言ったから。これただのルームシェアならありえないでしょ?」
にっこり笑って二枚のTシャツを掲げる。樹くんはただぽかーんとしてそれを見上げ、巧は無の表情でこちらを見ていた。
しばらく沈黙が流れると、リビングに樹くんの笑い声が響いた。またしても爆笑している彼は、無邪気な笑顔で私たちを見る。
「うーんまあ、とりあえず今日はそれくらいで納得しておいてあげる!」
巧ははあーと深くため息をついた。ギロリと笑う人を睨み、キッパリと言う。
「お前はもう出入り禁止。二度と来んな」
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