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巧が笑ったのを見てほっと息をつく。自分の頬も緩むのを自覚した。思えば本当に巧が帰ってきてくれなきゃどうなってたのか。また私をからかってただけかもしれないけど……。
巧はゆっくり立ち上がって頭をかく。私は心にあった疑問をぶつけた。
「私の連絡見て心配で帰ってきてくれたの?」
「ああ……樹って、前から俺の付き合ってる女にちょっかい出す傾向があって。流石に結婚してたらもうないと思ってたんだけど、言っておけばよかった。今度から絶対家にあげるな」
「そうなの、やっぱり巧に反抗的なのね樹くん……」
「……何もなくてよかった」
随分真摯な表情でそう言うもんだから、なんだか恥ずかしくなって俯いた。ただ正面で向き合っているだけなのに、押し倒された時よりずっと恥ずかしいのは何でだ、意味がわからない。
「てゆうかそのTシャツどうしたんだよ」
「あ、この前おばあちゃんのお見舞いに言った日、お礼のつもりで買っといたの忘れててさ。はいあげる!」
「ほんとお前は面白い女だよ」
巧は笑いながらそれを受け取った。まさかおにぎりTシャツがこんな形で役に立つとは思わなかった、グッジョブ私。
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