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「あの、樹くんああやって疑っててね。結構途中までそこそこ上手くかわせてたと思うんだけど」
「ああ、今後は二度と相手にしなくていいから。悪かった」
「それでもね。やっぱり、巧について知らないことが多すぎるなって思ったの。そりゃ形だけの婚姻関係でも、夫婦を演じていくなら色々知りたいと思って。教えてくれない?」
私が提案すると、彼は一瞬驚いたように停止したが、すぐに顔を綻ばせた。何だか嬉しそうに笑ったその顔は、ちょっと樹くんに似ていると思った。
「まあ、その通りだな」
「巧の恋人のシングルマザーってどんな人なの?」
ストレートにぶつけた。私が一番知りたいと思っていたことだった。
別に会ってみたいとかそんな事思わないから、どんな人なのかぐらい分かっておきたいと思った。樹くんに聞かれる前から、少し気になっていたから。
しかしそれを聞いた途端、柔らかかった巧の顔は強張った。その豹変ぶりに、私もつい釣られて口籠る。
「、い、いや、さっき樹くんにも聞かれたから、それで」
「別に話すことは特にない」
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