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巧はそう短く言うと、どこか気まずそうな表情をしながら私から顔を背けた。その時、あ、これは巧のその場しのぎなんだって気がつく。
彼は足早にリビングから出て会社へ向かった。いつも堂々としている背中とどこか違って見えた。私はただそれを無言で見送ることしかできず、もやもやとした黒い渦が心の中に残った。
そして、巧が言った『今度時間ある時』はやっては来なかった。それまでも仕事が忙しいためゆっくり顔を合わせる機会は少なかったが、それからは全くなくなった。朝も夜も、ただ忙しそうに私の隣をすり抜けて行くようになった。
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