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「顔面偏差値がやばいご兄弟……!」
「あは、杏奈ちゃんのお友達も面白いねえ」
「そっか、今日は弟さんと約束だったんですね! 家族とも仲がよくて羨ましいです高杉さん!」
私の言葉なんて何も聞かない河野さんは一人で納得し、一人で頭を下げた。樹くんと二人になりたくない私は彼女を引き止めようとするも、いったいここからどうすればいいのかも分からず上げかけた右手が寂しい。
「高杉さん、ではまた明日! 今度こそ飲みましょうね!」
「あ、河野さん……!」
まるで聞いてはいない彼女は、スキップでもしそうな勢いでそこから去っていった。嵐のように一瞬の流れだった。樹くんはポケットに手を入れたまま立って私に笑いかける。
「突然ごめんね?」
私は呆れの感情を隠さずに彼を見上げた。樹くんもそれを見て笑う。
「あはは、うんざりって顔してる!」
「ええと、私帰るので、すみません」
「大丈夫、もうキスしようとしたりしないからさー」
「ちょ、声、大きい!」
慌てて周辺を見渡す。人々は忙しそうに足を運んですれ違っていく。誰かに聞かれたら勘違いされそうな発言やめてほしい、私も巧も困ってしまう。
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