すれ違いだす心

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   私は軽く彼を睨むと、足早にそこを移動する。巧の言うようにタクシーでも捕まえて帰ろうかと思った。この子なら電車の中までついてきそうだ。 「あ、待って杏奈ちゃん。ちょっとご飯でも行こうよ」 「行きません」 「スッパリ! ごめんね、この前ちょっと調子に乗っちゃって」  ほとんど走るような形で急ぐも、彼は後ろから平然とついてきた。そしてこんな時に限りタクシーは通らない。  困ったなと思い一瞬巧に連絡しようとした。が、思いとどまる。 ……最近全く会話もしてないし、こんな時だけ連絡するのもな……。  顔すらゆっくり見ていない。  私はなんとか自分で対応しようと心を決め、とにかく人通りの多い道を歩きながらタクシーを探した。 「ちょっと杏奈ちゃんとご飯食べたいだけだってー」 「なら巧もいる時にして」 「やだよあんな堅い顔したやつとご飯食べるの」 「ねえ、この前私たちのことは信じてくれたんじゃないの? 何でこんなに執着してるの?」
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