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やや苛立ちを感じながら言葉に出す。一応、あのおにぎりTシャツで夫婦である証拠は示したはずだ。(マヌケな証拠だけど)人の仕事終わりを待ち伏せする目的はなんだと言うのか。
樹くんは突然私の前に立ちはだかった。つい足を止める。
彼の耳にひかる銀色のピアスが綺麗だと思った。
「杏奈ちゃんが気に入ったって言ったじゃん」
「すんごい嘘くさい」
「辛辣ー! 俺今回は結構まじなんだけど。二人の偽装結婚疑惑もまだ完璧に晴れてないし、そうなら俺と付き合っても問題ないし」
「問題まみれ」
私は彼を交わしてさらに足を進める。樹くんはなおついてきた。
3次元に興味ない私だってわかる。彼はかなりモテるタイプだし、女に不自由は絶対にしていない。少ししか会っていない私を気にいるだなんて絶対に嘘で、なんとかして巧の弱みを握るためにこの契約結婚を明かしてやりたいのだ。
普通の女なら揺れるかもしれない。それほど彼は顔は綺麗だし人懐こい。だがしかし今の私は足元に子犬が戯れついているようにしか思えない。
「本当に二人がラブラブ新婚ならこんなことしないよ? 俺不倫反対派だし」
「どの口がいうの」
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