すれ違いだす心

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「あ、ごめん、ありがと」 「こっちこそごめんだよ……」 「だから樹くんが謝ることじゃなくて」 「それじゃなくて。二人が偽装結婚って疑ってたこと。本当にちゃんと結婚してたんだね」  意外な言葉に顔をあげる。彼は叱られた子供のようにシュンと落ち込んみながら言った。 「ごめん、なのに色々ちょっかい出して失礼なこと言って」 「そ、れはいいけど……なんで急に」 「え? だって、巧のこと本当に好きなんだなあって。  じゃなきゃ、あの光景見てそんな泣きそうな顔しないでしょ」  ストン、と言葉が胸に落ちたようだった。  ……泣きそう? 私が?  巧と他の女性が並んで歩いているのを見て、泣きそう? 「なのに巧はあんな馬鹿で……! 本当にごめん」 「え、私……泣きそう?」 「え? そ、そりゃ……しょうがないって! 普通そうなるよ、平常心を保ってられるはずない。好きな奴に裏切られたら……」 「……好き、か」 「え?」  ただ足元にあるアスファルトをじっと見つめた。  まさか、そんな。  そんなはずない。世界がひっくり返ってもあり得ないはずだ。  私が巧を好きだなんて
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