3059人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、ごめん、ありがと」
「こっちこそごめんだよ……」
「だから樹くんが謝ることじゃなくて」
「それじゃなくて。二人が偽装結婚って疑ってたこと。本当にちゃんと結婚してたんだね」
意外な言葉に顔をあげる。彼は叱られた子供のようにシュンと落ち込んみながら言った。
「ごめん、なのに色々ちょっかい出して失礼なこと言って」
「そ、れはいいけど……なんで急に」
「え? だって、巧のこと本当に好きなんだなあって。
じゃなきゃ、あの光景見てそんな泣きそうな顔しないでしょ」
ストン、と言葉が胸に落ちたようだった。
……泣きそう? 私が?
巧と他の女性が並んで歩いているのを見て、泣きそう?
「なのに巧はあんな馬鹿で……! 本当にごめん」
「え、私……泣きそう?」
「え? そ、そりゃ……しょうがないって! 普通そうなるよ、平常心を保ってられるはずない。好きな奴に裏切られたら……」
「……好き、か」
「え?」
ただ足元にあるアスファルトをじっと見つめた。
まさか、そんな。
そんなはずない。世界がひっくり返ってもあり得ないはずだ。
私が巧を好きだなんて
最初のコメントを投稿しよう!