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無茶苦茶すぎて口から笑いが漏れてしまった。
ふとさっきのことを思い出して胸が苦しくなる。あんなに綺麗な人だったんだなあ相手の人。想像以上だった。
「そうだ、樹くんに無事到着したことくらい連絡しなきゃ」
鞄から携帯と名刺を持ってくる。心配してくれていたのだし、大丈夫だよという一言くらい送らねば。
流石に電話は気が引けたので、メッセージを打ち込んだ。今日のお礼とお詫び、無事に家に着いたことを伝える。
何度目からわからないため息を漏らした瞬間、玄関から鍵のあく音がして飛び上がった。ここ最近深夜にしか帰ってこなかったのに、今日はこんな早く? あれでも、あの人とホテルに行ったのに早すぎでは……
あたふたと慌てた。今彼と会って平常運転できる自信がなかったからだ。そうだ、巧がこのまま一旦自室へ入ってくれれば、私もその間に自分の部屋に閉じこもって……!
計画はすぐに打ち砕かれた。巧の足音はまっすぐにこちらのリビングに向かってきているのに気づいたからだ。
どうすることもできずソファの上で挙動不審になっていた時、扉が勢いよく開かれた。
「……あ」
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