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丁度背後にあったソファに着地した瞬間、それを追うように巧が近づき、私の肩を掴んで体を背もたれに押しつけた。そして追い被さるようにして再び私に深く口付けた。されるがままその柔らかな感触を受け入れた。
待って、どうして、何がどうなってる。
ぐるぐると頭の中が回る。樹くんに押し倒された時とは全く違う。自分の混乱と戸惑いがぐちゃぐちゃだ。
自分は他に女がいるくせに、恋愛は自由だと言っているくせに、仲の悪い弟と付き合うのだけはそんなに許せないのか。その怒りをこんな形でぶつけているのか。
一気に頭が冷えた。
体が言うことを聞くようになった瞬間巧を強く突き飛ばす。彼は後ろによろけながら私から離れた。反射的に手で口元を覆う。
「ばっ……かじゃないの! 最低!」
そう叫んでようやく巧の顔が目に入る。さっきまで怒りを抑え切れないと言った顔をしていたその人は、今はなぜか視線を落として叱られた子供のような弱々しい表情をしていた。
それもまた見たことのない顔で、ぐっと言葉を飲む。なんでそっちがそんな顔してるのよ、傷ついたみたいな顔してるのよ!
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