3025人が本棚に入れています
本棚に追加
流石に同じ家にはいられないと思った。
バッグに簡単に荷物を詰めて夜中にこっそり家を出た。巧と顔を合わせるかもしれない環境から離れたかった。
かといっていくあてはない。実家は荷物をまとめて帰ってきたとなれば両親は大騒ぎするだろうし、麻里ちゃんの家は離れているから仕事に通えなくなる。友達も、なあ……巧と喧嘩した理由とか聞かれたら上手く誤魔化せる自信がない。
仕方がないので安いビジネスホテルに泊まった。翌朝そこから出社し、またそこへ帰宅した。
正直これから先どうするのか見当もつかない。巧は連絡なんてしてこないし、私だってする余裕はない。婚姻関係を終えるとしてもあまりに早すぎて親が卒倒しそうなので避けたいと思った。
部屋を借りようか。別居、って形。
それしか思い浮かばなかった。仕事終わりに不動産屋へ駆け込み条件に合った部屋を探す。流石に毎日ホテル泊まりは出費が痛いので急いだがそう簡単に部屋が見つかるわけもなく、うなだれながら味気ないホテルへと戻る。
困ったぞと一人ベッドで寝そべりながら携帯で部屋を見ていた時、樹くんから電話がかかってきた。
最初のコメントを投稿しよう!