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そういえばあの日の夜も掛けてきてくれたんだっけ。
思い出して憂鬱に陥る。あの馬鹿男の考えていることが今でもまるで分からない。
「はい」
私は気分を切り替えて電話に出た。耳元で樹くんの声が聞こえる。
『あ! 杏奈ちゃん、よかった!』
「この前も電話貰ってたのに出れなくてごめんなさい」
『それは全然構わないけど! あれから大丈夫かなって心配になって』
巧の言うように私がお気楽でなければ、樹くんはやっぱりそんなに悪い子には思えないと考える。そりゃ最初はかなりやりすぎたけど……。
むしろ巧とどうしてあんなに仲が悪いのか不思議なほどだ。樹くんなら兄弟に懐いていそうなのに。
「ええと、うん大丈夫だよありがとう」
『離婚とかしちゃうの?』
「ううん今のところは」
『今のところ?』
「ま、まだ様子見してるの!」
『ふうん、巧のマンションに帰ってないもんね』
突然放たれた言葉につい息を呑んだ。
「な、何で知ってるの?」
『あ、本当にそうなの? ごめんカマかけただけ。もしかしたらそうなのかなあって。杏奈ちゃん意外と引っかかりやすいんだね』
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