ストレートに聞かせてよ

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『まあとりあえず会うのは諦めた。でも一人で外泊繰り返すのも危ないから何とかしなよ。俺みたいなのに押し倒されるよ』 「あは! ありがと。樹くんって本当はいい子だよね、お調子者だけど」 『……いい子なんて初めて言われたよ』  困ったように呟いた彼に微笑む。ああ、本当に弟みたいに思ってきちゃった。 「電話、本当にありがとうね。また機会があればみんなで食事でも行きましょう」 『はいはい、みんなでね。おやすみなさーい』  電話を切ったあと、ベッドにごろりと寝そべった。いつも使っている感触とは違うので違和感を感じる。  充電が残りわずかになった携帯を翳して見つめた。 「樹くんだって心配して電話くれるのに……あいつは何も言ってこないんか」  散々好き勝手したくせに。  ごろりと寝返りを打って目を閉じる。  これからどうしよう。もう巧とは会わないまま別居して婚姻関係を終えるんだろうか。でもそれが最善のような気もしてきた、叶わぬ恋を抱いて一緒に暮らすのは流石に辛い。 「明日は部屋を探すぞ」  そう強く決意して、私は目を閉じた。
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