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瞼を閉じて闇の世界にいる最中、枕元にある携帯から音が鳴り響くのに気がついた。
「うう……ん」
寝ぼけ眼で腕を伸ばし携帯を掴む。朝のアラームかと思っていたが、音がアラームのものではないのに気がついた。
「なに……?」
ぼんやりとして手元のそれをみると、樹くんからの着信だったので驚く。時計は朝の五時を表していた。
こんな時間に電話? 昨晩も話したっていうのに?
疑問符で頭がいっぱいになりながらそれに出る。
「もしもし? 樹くん?」
『……あ、杏奈ちゃんごめんこんな朝に』
「それはいいけど、何? どうかしたの?」
彼の声はどこか暗いように感じた。一瞬で心に翳りができ不安が渦巻く。
小声で樹くんが言った。
『……巧の車が、事故を起こして』
一気に頭が真っ白になる。
耳に入った言葉を理解するのに時間を要した。
「……え、いまなんて」
『事故、起こして。後ろから玉突きされたみたい。それで今中央病院で……』
「た、巧はどうなの? 大丈夫なの!?」
縋り付くように電話相手に尋ねた。心臓が冷えたように感じる。
『…………』
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