ストレートに聞かせてよ

7/33
前へ
/382ページ
次へ
   瞼を閉じて闇の世界にいる最中、枕元にある携帯から音が鳴り響くのに気がついた。 「うう……ん」  寝ぼけ眼で腕を伸ばし携帯を掴む。朝のアラームかと思っていたが、音がアラームのものではないのに気がついた。 「なに……?」  ぼんやりとして手元のそれをみると、樹くんからの着信だったので驚く。時計は朝の五時を表していた。  こんな時間に電話? 昨晩も話したっていうのに?  疑問符で頭がいっぱいになりながらそれに出る。 「もしもし? 樹くん?」 『……あ、杏奈ちゃんごめんこんな朝に』 「それはいいけど、何? どうかしたの?」  彼の声はどこか暗いように感じた。一瞬で心に翳りができ不安が渦巻く。  小声で樹くんが言った。 『……巧の車が、事故を起こして』  一気に頭が真っ白になる。  耳に入った言葉を理解するのに時間を要した。 「……え、いまなんて」 『事故、起こして。後ろから玉突きされたみたい。それで今中央病院で……』 「た、巧はどうなの? 大丈夫なの!?」  縋り付くように電話相手に尋ねた。心臓が冷えたように感じる。 『…………』
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3017人が本棚に入れています
本棚に追加