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私が涙ながらに彼に駆け寄ってる最中、ベッドの上に寝そべる男はそんな寝ぼけた声を上げた。私は同時に力が抜けてコケた。盛大にコケた。マヌケみたいにコケた。鈍い音が病室に響く。
膝小僧を派手に床にぶつけて痛い。
「うわ、大丈夫か? てゆうかなんでここに」
頭上から聞き慣れた声がする。
私は床に全身を預けながら、顔だけをあげる。
「…………」
「杏奈?」
「……た、巧?」
私を覗き込む心配そうな表情はやっぱり巧の顔だった。傷一つない顔だ。
あ、あれえ???
死んじゃったか、もしくは重体で死にかけてるモンだと思ってんただが……???
私は唖然としながらも、そのまま今度は背後にいる樹くんを振り返って睨んだ。彼はトボけた顔で肩をすくめる。
「あれー? さっきまで起こしても全然起きなかったんだけど」
「…………」
ハメられた。
私ははあーと大きなため息をついてそのまま体を起こすこともなく脱力した。わけがわからないというように巧が慌てていう。
「だ、大丈夫か? どうした」
「…………」
「起きれないのか? 病院の床なんて雑菌だらけだぞ」
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