2988人が本棚に入れています
本棚に追加
心配して駆けつけた人間を雑菌扱いかこの男。
私は無言のままフラフラと立ち上がる。座った目でベッドに上半身を起こして座る巧をみた。彼は至って元気で、怪我も負っている様子はない。
「事故に、あったって」
「え、ああ……背後から追突されたんだけど、そんなスピードは出てなかったから。ちょっと首が痛いから検査だけしてもらってるけど」
「…………」
「どうした、樹が連絡したのか?」
巧は眉をひそめて私と樹くんの顔を見比べる。そんな中、彼が無事であったことでぶわっと気持ちが一気に溢れ出た。
安堵感と、苛立ち。
人の気も知らないでキョトンとしている巧に怒りを覚えた私は、完全に八つ当たりだと分かっているが我慢しきれず持っていたハンドバックを巧に向かって投げつけた。それはちょうど巧の胸にヒットする。
「うわ、なんだよ!」
そう言いながら私の顔を見上げた彼はぎょっとする。私の目から大粒の涙が溢れ出ていたからだ。
よくよく考えれば私は寝起きのすっぴんに寝癖つき。おにぎりのTシャツにクタクタのズボン。それすら忘れてしまうほど頭がいっぱいだったのに。
最初のコメントを投稿しよう!