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検査を終え、特に大きな怪我もなく打ち身程度だと診断され私たちはそのまま帰宅が許された。
巧の車は事故により使えなかったため二人でタクシーに乗り込んで帰った。この格好で電車に乗る勇気がない私のためでもある。
普段と違って巧はずっと無言だった。私の方を見もせずに考え込むようにして暗い顔をしている。それがいい話でないことは容易に想像がついた。
でも……どうして? 彼の好きな人について話すだけなのに、なぜそんな暗い表情をしているのか。
もしかして私の気持ちがバレているのかと思った。だから彼は困って言い方を考えているのだろうか。
万が一この気持ちが巧にバレてそれが彼を苦しめることになるのなら———やっぱり、彼のそばにはいられないと思った。
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