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廊下を出てすぐにある巧の部屋の前に二人でたつ。私がチラリと顔を見上げると、彼はもう腹を括ったような顔をしていた。
「開けて」
「え、私?」
「開けて」
言われた通りおずおずとドアノブに手をかけて開く。私の部屋と同じ間取りの部屋が見えた。
広々とした部屋には大きな窓に広いクローゼット。だがその広さを無駄にしていると思うほど彼の部屋は物が少なくて閑静だった。仕事用デスクにベッド、難しそうな本が並んだ本棚のみ。テレビだのクッションだの夢の世界だのと溢れている私の部屋とはまるで違った。
そんな部屋に、完全に浮いているものが一つあった。未だ一度も着ているところを見たことがないおにぎりTシャツが一枚掛けてあったのだ。なんでこれだけクローゼットから出してるんだ、一気におしゃれな部屋がアホっぽく見えるじゃないか。
「物ないんだね巧の部屋」
「普通だろ」
「で、この部屋が何?」
私がキョトンとして尋ねると、彼は気まずそうにある場所を指さした。それは彼の仕事用デスクだった。
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