2943人が本棚に入れています
本棚に追加
つい反射的に言い返してしまったが、すぐに口をつぐむ。そうなの、そうだったのか……あの時の相手が巧だったなんて。
もう当時の顔なんて全然思い出せない。でも確かに大好きな憧れの男の子だった。
巧がゆっくり歩み寄り、クリアファイルを手に取ってそれをじっと見つめた。
「俺は名前聞いてすぐ分かった。顔みて再確認。あああの時の子だって」
「い、言ってよ……てゆうか、そんなものよくこんな長く持ってたね、あの後持って帰ってたことにもびっくりだけど……」
「捨てられるわけない。俺はあの時、嬉しかったんだ。でも周りの男友達がニヤニヤみてて、恥ずかしくなってつい捨てた」
懐かしむように巧が目を細める。その横顔をみて、何だか一気に懐かしく感じてしまう私は単純にも程がある。彼の子供の頃の姿を思い出せそうだと思った。
「捨てた瞬間泣いた杏奈をみて後悔したんだけど。その後引っ越しちゃったし、謝ることもできず」
「そう、だったんだ……」
答えた後、私はふっと笑いをこぼした。巧が私を見る。
あの頃の場面が蘇った。悲しくて辛くて三次元に興味なくなるくらい二次元にハマったきっかけでもある。
最初のコメントを投稿しよう!