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高杉杏奈。年は二十七。
磨き抜かれた肌と爪、自信に溢れた表情と姿勢。
仕事は一流会社の秘書課勤務。気難しいと噂さる会長や社長にも腕を認められる敏腕。
女性なら誰しも憧れる才色兼備な彼女には、誰にも言えない秘密が一つだけあった。
「ああオーウェンかっこいい、最高だ、抱いてくれオーウェン」
うっとりしながら画面を見つめる。そこにはキラキラ輝く金髪の男性がいる。いつだって甘い言葉を囁いてくれる世界で最高のお人だ。
ため息を漏らしながら、心の中でつぶやく。
これだ、これ。私の癒しはこれなのよ。二次元が一番、三次元の男なんて眼中にもない。
アイドルだって俳優だって、そりゃかっこいいとは思う。でもスキャンダルだのなんだのって、結局いつかは幻滅させられる事が多々ある。この前だって、人気の若手俳優が未成年と飲酒してワイドショーが騒いでいた。
その点オーウェンは決してスキャンダルなんて犯さない。いつだって王子様。
高杉杏奈。年は二十七。
二次元を愛するがゆえ三次元の男をまるで恋愛対象に見えず、彼氏ができることなくこの歳を迎える。
最近の悩みは、両親が結婚はまだかと遠回しにチクチクしてくること。結婚? いやいや、オーウェンより素敵な男性なんて一生現れるはずがないじゃない。
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