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「……形だけでも、結婚すれば少なくとも繋がりはできると思った」
巧の口から漏れてくる言葉はあまりに難解すぎた。いや、決して小難しい単語を使ってるわけでもない。ただ内容が信じがたくて、想像をずっと超えていてもう私の脳では処理が追いつかないのだ。
もはやフリーズしている私の顔を彼が困ったようにみてきた。目が合った瞬間、胸が痛いほどに鳴り響いた。
「それらしい理由をつけて杏奈に契約を持ちかけた。あんなすぐ承諾されるとは思ってなかったけど」
「……」
「心がわりされないようにマンションも即決して外堀を固めた。そういうのは俺得意だから」
「ああ、確かにめちゃくちゃ早かったね色々」
「正直言うと、男に興味ないって言っても一緒に暮らしてみればなんとかなるかもしれないと邪な気持ちはあった。でもお前下着見られても平気だわ俺の裸も感心しながらガン見だわで脈なしなのはよくわかった」
「ま、って、じゃあ、え? 巧、私のことが好きなの?」
どストレートに聞くと、巧はぎょっとして目を見開き、困り果てたというように大きく天井を仰いだ。大袈裟なほどの振りだった。
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