2928人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ごめん、引いたろ。いつか言うべきかなと思ってたけど、引かれるの分かりきってたから。バレないように色々気遣ってたつもりが」
「巧」
「無理だって思ったら言えばいい。どっか違うマンションでも買って杏奈はそこに住めばいい」
「巧って」
「この前も、キスしてごめん。カッとなった。もう二度としないから」
「たーくーみってば!」
一人でペラペラ話す男の背中を思い切り叩いた。バシッと大きな音が響く。いてっと巧は反応してこちらを振り返った。
私は気まずそうにしている巧の顔を見て笑う。いつも自信家で隙のない男のそんな顔が非常に可愛いと思った私はもう引き返せない。
この人意外と不器用なんだな。
「自分ばっかり話して私の話は聞かないの? こう言う時王子様たちはもっと落ち着いて振る舞うんだよ!」
「王子……?」
「普段自信満々のくせに、何で大事な時には自信無くすの? 私が巧を好きだってどうして1ミリも思わないの?」
私のセリフを聞いて、彼はぴたりと停止した。
こんなはずじゃなかったのになあ。私、二次元専門だったんですけど。しかもオーウェンから程遠い腹黒男。
最初のコメントを投稿しよう!