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それを聞いた途端、私はぶはっと吹き出した。最後の決め台詞のはずなのに完全にツボに入ってしまった。
巧は眉を下げて不機嫌そうな顔になる。
「何で笑うんだよ」
「だ、だって……! 付き合うって! 私たち、結婚してるんだよ!」
ケラケラ笑いながら言うと、巧もつられて笑った。笑うとできる目尻の皺が優しい。
「それもそうだった」
「もう、順番めちゃくちゃ……! お腹痛い!」
「それにしてもムードのない女だよお前は」
ひとしきり笑った私は息を落ち着かせた。巧の顔を見上げて返事する。
「うん、そうだね。そこから始めよう」
それを聞いて巧はまた優しく笑った。結婚してるくせに今日から交際スタートだなんて、ほんとイレギュラーすぎ。
それでも嘘で固められた壁をようやく壊して彼の気持ちが聞けた今日のことを、私は絶対に忘れないと思った。
好きな人に好きだと言ってもらえる喜びは恋愛ゲームでは味わえない幸福感だとしれたんだから。
私たちの変わった関係はやっと今日からスタートする。
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