経験値低すぎ

5/47
前へ
/382ページ
次へ
「普通だろ」  そう答える巧声は至って普段通りだった。なんとなくそれにほっとする。自分の中で張っていた緊張がややほぐれる。 「朝ご飯食べた?」 「まだ」 「あ、昨日のご飯余ってた。卵かけご飯にしよう」 「お前さ……いやいいけど」  巧は呆れたように言った後小さく笑った。そんなどうでもいいシーンなのに、なぜか私はどきりと緊張した。それを隠すように慌ててキッチンに入っていく。 「巧もいる? 卵かけごはん」 「もらう」 「流石にもう一品欲しいよねえ〜ほうれん草でも茹でるか」  冷蔵庫を開けて独り言を言いながら野菜を取り出した。さっさとお湯を沸かしてすぐに茹で、絞ってカットする。醤油とかつおぶしでよし! 「完成ー私ほうれん草好きなんだよねー」  ご飯をよそって卵も準びすると、いつのまに来ていたのかダイニングテーブルに座っている巧がいた。私は上機嫌で運ぶ。 「ありがとう」 「あー美味しそう! いただきます!」  卵かけご飯にほうれん草茹でただけ。いつもと変わり映えしない朝食だった。むしろ平日はパンだけを齧っているから普段より豪華かもね。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2865人が本棚に入れています
本棚に追加