2860人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっとね、朝から自分の経験値の低さに辟易しててね……脳内お花畑って感じで」
自分で考えてゲンナリしてしまった。現実と二次元の境が混乱してるぞ、そんな展開三次元で起きるわけがないだろ。雨降ったら車があるわ。コンビニで傘買うわ。
そんな私を不思議そうに隣から巧が見ていた。なんでもない、と答えてしゃんと背筋を伸ばす。
「上映何時からだっけ」
「11時半。それまでどっか行きたいとこあるか」
「え、ええ……ううん、か、買い物とか……?」
「オーケー。ようやく俺のカードの出番がやってきたな」
巧はそう満足げにいうと、突然すぐそばにあったブランド店に方向転換して入っていった。ぎょっとして目を丸くする。あまり私自身はブランド物なんてそこまで身につけるタイプの人間ではないのだ。それを、誰しも知ってる高級店に!
「巧、私そんな店は特に!」
慌てて追いかけて彼の背中にそう言って見せるが、聞こえているのか無視されたのか。巧はするりとガラスの扉をくぐり抜けてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!