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いやしかし、最もだった。巧はしっかりブランド物を身につけているのに、私だけ庶民じゃ浮いてしまうか。
丁度めざとく接客をしにきた店員に巧がなれた様子でサイズを尋ねる。私に合うものを用意して貰うと、すぐそばにあるソファに腰掛けて試しに履いてみた。
ひいい、こんな高いものを踏みつけて歩くのか私は。恐ろしい経験だ。
ただそれでも、履いてみた瞬間安物とは圧倒的に違うデザインとオーラに女として少しうっとりした。履き心地もよい。足先がしゃんとするだけで、こんなにも気分が変わるのか。
巧は立ったまま私を見下ろし、満足げに笑った。
「似合ってる」
「……あ、どう、も」
「それでいい?」
「は、はい」
「決まり。これを」
近くの定員が頭を下げて笑顔でお似合いですよ、などと述べてくれる。なんだかむず痒くて、ただ必死に会釈した。こういった店でも動じないように訓練が必要だなこれは。
「意外だな。杏奈がこういう店に慣れてないとは。でもまあ確かに身につける物にブランドものあまりなかったな」
「鞄くらいちょっといいの持ってるけど……別に今まで必要な場面もなかったし」
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