2849人が本棚に入れています
本棚に追加
「これからは必要だろ。俺と出かけるのに」
自分の靴に履き替えながらふ、と笑ってしまう。確かにこれだけ一緒に暮らしておきながら初めてのお出かけだもんな。でもこれから先も続くのか。
立ち上がろうとした瞬間、自然な動作で巧が手を差し出した。ぎょっとして見上げる。
「? どうした」
キョトンとして彼が言う。
目の前に差し出された大きな手を見つめて少し戸惑った。
そういえばオーウェンもこういうシーンがあった、あれは靴の試着じゃなくてヒロインが転んじゃったのを手を差し伸べて助け、そのまま自然と手を繋ぎながらデートをするっていう鉄板の流れ……
ってそんなことを考えている場合じゃない。
私はなるべく平然を装ってそれに自分の手を重ねた。思えば抱きしめられたことだってキスされたことだってあるのに、手を握るのは初めてだった。
最初のコメントを投稿しよう!