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これまでもそれなりに恋愛してきたと巧は言っていたし。私とは経験値がまるで違う。きっとデートだって腐るほどしてきたはずなのだ。
そう想像してみると、ちょっとモヤモヤした気になる自分は幼いなと思った。デート経験ない私が異常なんだっていうのに。
「結構面白かったな。ラストが微妙だったけど」
ぼうっと考え事をしている時に話しかけられてはっとする。なんのことだ、と思いつつすぐに映画の話だと気づいて慌てて同意した。
「そうだね、オチだけちょっとね」
「途中の臨場感はよかったんだけどな」
「キャストが合っててよかったね」
「久々にホラー映画なんて見た」
巧がそう笑った後、なんとなく沈黙が流れた。家ではくだらないことを言ったりもするのに、外だとどうも緊張してしまうのは不思議でならない。思ったより自然な言葉が出てこないのだ。
落ち着かないためやたら目の前の水を飲む。今注文したばかりなのに、早く料理が来てくれないかなと願った。
ちらりと正面を見てみる。
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