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無論普段の黒いスウェットでもない彼は腕時計を眺めていた。ああやっぱり、どうも正面向き合って改まって外食って気まずい。なんでなの。卵かけご飯食べてた時は普通だったのに。
何か話そうと思っても話題が思いつかず言葉が出ない。店のBGMがやたら響いていた。
なんだか、なあ。付き合ってるカップルってこんな感じでいいのかな。
見たのもホラー映画だし、手を繋いで街を歩くわけでもないし、向かい合っても沈黙流してる。私にはどうしてもわからない。
「これからどうする」
突如巧が言った。その声に反応してびくっと体が揺れる。
「あ、えーとそうだね」
急いで頭の中を回転させるが、もうこの恋愛ど素人の知識は全て使っていた。映画、買い物、ランチ。他に何も浮かんでこない。あとは海に行って「捕まえてごらん」とか追いかけ回してる馬鹿みたいな映像しか思い浮かばなかった。
これから。これからって、何しよう。みんな何してるの? 全然わからない。
「もう、堪能したかなあ……」
ポツンと声を出す。まだ時刻は昼過ぎだと言うのに、そんな言葉が漏れてしまった。
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