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淡々と言った彼は私と目を合わせないままテレビの電源をつける。バラエティの再放送でもやっているのか、明るい笑い声が響いた。
巧に何かを言おうと思ったのだが何を言っていいのかわからなかった。恋愛経験値ゼロでごめん、三次元は予想外だったから、って? 言えるわけない。
少々気まずくなった私はとりあえず冷蔵庫に向かって飲み物を取り出す。それを持ち、迷いつつも巧の隣に腰掛けた。
彼と並んでテレビを見るのは初めてなんかじゃない。それなのに、なぜか私は緊張した。
テレビを意味もなく眺めながらチラリと隣の巧の表情を盗み見る。別にいつもと変わりないように見えるが、どこか不機嫌そうにも感じた。
……どうしよう。呆れさせたかな。
心の中で大きなため息をついた。
やっぱりあの後も適当な場所をぶらついて夜になるまで待って、ちょっと夜景とか見にいってムードを作ってキスでもかましたほうがよかったのか。いやでも一緒に住んでるのにわざわざ外でそんなことする必要なくない?
「杏奈? 何かすごい表情してるけど」
「へっ!!」
「この芸人嫌い?」
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