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呼ばれてぱっと顔を上げた瞬間、思ったより近くにいた巧の顔に驚く。ついその衝撃で後ろにのけぞってしまった。
巧は何だか困ったような顔をしていた。何かを言いかけては口籠る。
「え、な、なに……?」
「……いや、なんでもない。ごめん。着替えてきたら」
ふいっと顔を背けて彼は言った。巧が言いかけた言葉の続きが気になったけれど、今の私は無理に聞き出せるだけのパワーがなかった。巧は再びソファに座りつまらなそうにテレビを眺め始める。
私は無言でそんな巧に背を向けてリビングを後にした。この濡れた服を着替えるためというのは勿論、なんとなくここには気まずくれいられないと思ってしまった。
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