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ガチャリとリビングの扉が開いた。あの憎らしい顔が見える。巧は私をみて何か言いかけた瞬間、すぐに目を丸くした。
「…………おかえり」
私は小さな声で呟く。口の中はいっぱいだ。巧は何やら手に箱を持っていた。
「珍しいな、昼飯作ったのか?」
巧がそう言ったのを無視した。今の私は返事ができるだけの余裕がなかったのだ。ただ箸をすすめてもぐもぐと食べ続けている。
巧は普段通りのすました顔でリビングの戸を閉め、私の元へ近づいてきた。
「料理なんて珍し」
言いかけた彼は止まった。テーブルの上にやたら置かれているほぼ空の皿たちを見て停止している。
2人前の料理は流石に胃がキツい。しかもチキン南蛮って。カロリー摂取しすぎた。
「……え、これ」
私は何も言わずにそのまま箸を進めている。巧は慌てたように、私の右腕を掴んで止めた。
「ちょ、待て! これ、二人分?」
なぜ聞くのか。聞かなくてもわかるだろうに。
どう見ても二人分のお皿たちとお箸だ。
「そう、だけど」
「は? 俺の分?」
「他に誰のために作るのよ」
「は!?」
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