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掴まれた手を払って再び食べようとした私を、巧はまたしても止めた。
「ちょ! ならなんで食べてるんだよお前が!」
「だって巧何時に帰ってくるか分かんなかったんだもん。LINEしたのに既読にもならないし」
「え!? ご、ごめん充電切れてた」
珍しく戸惑う巧を見上げる。彼は眉を下げて困ったような顔をしていた。睨みつけてやろうと思っていたのに、その表情を見て、なんだか自分が情けなくて仕方なくなった。
デートすらまともにできなくて、それを正直にも話せないで。頼まれたわけでもない料理を勝手に作って帰りが遅いと一人で苛立ってる。なんてめんどくさい女なんだと思った。
全部が空回っている。
「……杏奈?」
「……ごめん」
「え、いや、俺も連絡しなくてごめん、杏奈が飯作ってるとは思わなくて」
「ごめん、巧……なんか私色々ちゃんと出来なくて、怒らせてごめん……」
「は? 怒る?」
またしてもじんわりと出てきた涙を見て、巧がぎょっとしたように仰反る。彼は焦ったように言った。
「ど、どうした」
「昨日から……なんか全然上手く出来ないから、巧も呆れたかなって」
「何が?」
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