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巧はどこか赤い顔をして私から視線を逸らしたまま言った。
「そんなの俺もだよ」
「……へ」
「思えば昨日、杏奈にばっかり意見聞いて、つまらなかったんだろうなって。反省して、買ってきた」
「……え!?」
「今日はそこの雑誌に書いてあった場所見てきて、帰りにケーキ屋行って買ってきた。昨日買い物も俺の好み押し付けたし、なんか、自分よがりだったから杏奈が呆れてるのかと思って」
予想外の言葉に開いた口が塞がらない。
私はなかなか頭がついていかなくて、意味もなく目の前の雑誌たちと巧を交互にみくらべた。巧が、これ買って、下見に行ってたってこと……?
あのいつだって自信家の巧が? すました顔してる巧がそんなことしてたの?
「で、でも巧は今までもたくさんデートしてきたんじゃないの……」
「どうでもいい相手だったから何も考えてなかったし、適当に過ごしてただけ。今思えばデートっぽいことなんかしてない」
「そう、なの?」
「だから俺もよく分からないんだ。杏奈をどこに連れて行けばいいのかとか、全然分からなくて……」
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