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本当の初めてのキスはあの事故みたいなキスだけど、それはもう忘れてこれをファーストキスにカウントしよう、と心で思った。それくらい幸福感に満ちた時間で心臓の音がうるさいほどに響き渡っている。
少し経って巧が離れた後、彼はすぐにぷっと吹き出して笑った。
「チキン南蛮の味」
「……ちょっと、ムードないな!」
「いつものことだろ。杏奈にムードなんて一番遠いもんだろうが」
「それでもチキン南蛮の味はないよ! もっと他のもの作ればよかった」
「そういう問題かよ」
巧はそうまた笑った後、残っていたチキン南蛮を頬張った。それはそれは美味しそうに食べるもんだから、今度もっとちゃんと作ってやろうと心に誓った。
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